いろんな花肘木 【解説】

前に蟇股についての解説記事を書いたのだけど(参照:いろんな蟇股),今回は花肘木について.蟇股と同じく中備などに使われる装飾材です.

法隆寺南大門花肘木
【法隆寺南大門花肘木】(HDR合成,撮影:2010年3月21日)

花肘木がうまく使われている建築というと,やはり「法隆寺南大門」(国宝,奈良県生駒郡斑鳩町,参照:法隆寺 #3).法隆寺の国宝建築の中では一番新しい永享10 (1438)年の建立です.

花肘木は双斗に図案化した花を取り入れたもので,古いものだと元徳元 (1319)年の「浄土寺多宝塔」(国宝,広島県尾道市,参照:浄土寺 #1)の内陣に使われています.

花肘木もいろんなところで見ているような気がするのだけど,撮った写真を探してみるとものすごく少なかった.とりあえず6つ載せます.

花肘木いろいろ
【花肘木いろいろ】

1. 八幡神社拝殿(重文,兵庫県小野市,参照:浄土寺) - 室町前期
2. 八幡神社拝殿(1と同じ)
3. 浄土寺阿弥陀堂(重文,広島県尾道市,参照:浄土寺 #2) - 貞和元 (1345)年
4. 常徳寺円通殿(重文,香川県三豊市) - 応永8 (1401)年
5. 圓成寺楼門(重文,奈良県奈良市,参照:円成寺) - 応仁2 (1468)年
6. 白山神社本殿(重文,奈良県桜井市) - 室町後期

1と2は同じ建物で,外から見えるところにあるのが1で,内部に使われているのが2.花肘木が双斗からきていることを考えると2の花肘木が初期の花肘木に最も近そうな気がします.2は珍しいタイプのもので,古いものでは1,3のタイプが多いように思います.このタイプのものは花肘木付双斗と言ったりもします.4は花肘木に双斗をのせる珍しいもの.花肘木はもともとは構造材で,上側の2点で上の部材を支えていたのだけど,4は完全に装飾が目的になってます.5は花肘木の好例として有名なもの.6は比較的新しいもので,自由な装飾がなされています.
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日本庭園の基礎用語と楽しみ方 【解説】

たびねすに日本庭園の解説記事を2つ書いてみました.

分類や形式について:http://guide.travel.co.jp/howto/43/
石組について:http://guide.travel.co.jp/howto/55/

多賀大社奥書院庭園2
【多賀大社奥書院庭園】(HDR合成,撮影:2011年5月7日)

北畠氏館跡庭園2
【北畠氏館跡庭園】(HDR合成,撮影:2009年8月21日)

自分流HDR合成法

自分なりのHDR合成法をかいて(『もらった写真でHDR合成 #1』),メニューに「自分流HDR合成法」を載せたところ,結構クリックしてもらってるので,自分の撮った写真でちゃんとかいてみようかと思います.題材は「西予市宇和町卯之町」(重伝建,愛媛県西予市)です.

「HDRって何?」っていう人はwikipedia(HDR合成 - wikipedia,外部リンク)などを参照して下さい.



撮影編

まず,撮影.自分の場合は細部強調を強めにするので,ノイズがのらないようになるべく低感度で.

uwa01

こんな感じに明 (+2EV),中 (0EV),暗 (-2EV)の3枚撮影.明暗差が大きいときは枚数はもっと増えます.この写真は三脚を使用していますが,手持ちAEBでも,まぁありです.露出は明るいのはがっつり明るく,暗いのは白とびがない程度に.この写真では雲が少し白とびしている点は失敗です.



合成編

まずPhotomatix Pro 4.0で合成.奇をてらうだけの絵にならないように.あと,HDRというのは明るさを均一化することに他ならないので,かわりに明暗を彩度で表現するようにしてます.明部は彩度高めで,暗部は低く(曇り空は彩度を低くしたほうがいいです).

デフォルトの設定は次のようにしています.

- 強さ:90/彩度:80/光度:10.0/細部コントラスト:10.0
- スムージング:最低
- 【トーン設定】白色点:0.199/黒色点:0.199/ガンマ:1.0
- 【カラー設定】色温度:0.0/ハイライト部の彩度:0.0/シャドウ部の彩度:0.0
- 【その他の設定】マイクロスムージング:5.0/ハイライト部のスムーズ:10/シャドウ部のスムーズ:10/シャドウ付加10

ここからいろいろいじっていきます.

uwa02#

1. デフォルトの設定です.空がポワーとしてて屋根が光ってます.
2. ハイライト部スムーズを上げます(10→65).空が明るくなって,屋根との境界が自然な感じになりました.この写真ではやっていませんが,全体の明るさはこの段階で調整します(トーン設定のガンマを調整).次に彩度の調整をします.
3. まず,ハイライト部の彩度とシャドウ部の彩度を-10.0まで下げてみます.彩度が残った部分が飽和していないかチェック.旅館の柱の彩度がちょっとうるさい感じがします.
4. 柱の彩度がおちつく程度に彩度を下げます(80→60).
5. ハイライト部の彩度をゼロに(-10.0→0).この状態で色が飽和してたら彩度を下げます.この写真では必要なし.
6. ハイライト部の彩度をあげます.やはり飽和しないように.この写真では10.0まで上げても大丈夫でした.
7. シャドウ部の彩度を上げます.必ずマイナスにして影の部分の彩度は低めにしておきます.ここでは-2.0にしました.
8. 最後にスムージングを上げます.中が自然かな.これを基調に仕上げていくことになります.
9. 明部が少し暗いのもつくっておきます.スムージングを低に.
10. 雲のコントラストが大きいのもつくっておきます.ハイライト部スムーズを下げます(65→10),全体のスムージングを最高に.

この8,9,10をくみあわせていきます.



編集編

GIMP 2をつかいます.フォトショでもなんでもいいのですけど,GIMPはただなので.

まず,8と9の画像をレイヤーモード「比較(暗)」で重ねます.これで自然さを保ちつつ明るい部分をきちんと表現できます.この写真では不要と判断したけど,軒下などの暗部が暗すぎると思ったら,9の画像を透明度を調整して重ねるとよいです.

uwa03

雲のコントラストをあげた10の画像を重ねるときはレイヤーマスクを使います.

uwa04

空の部分とそれ以外を白黒でわけ (1),10のレイヤーにレイヤーマスクを追加し,白黒にわけた画像をコピーしてはりつけ.必ずぼかしてからレイヤーを統合します (2).さらに,もとのレイヤーを違和感がないぐらいに透明度を調整して重ねます.

uwa05

回転→トリミング→レベル調整→彩度調整→フィルタ(アンシャープマスク・漫画)でできあがり.漫画のフィルタは色の境界を黒くするフィルタですが,自分のHDRにうまくあってるようでよく使ってます(ちなみに白の輪郭は,反転→漫画フィルタ→反転でかけます).ただ,ちょっとチートな気がするので,うっすらと.

↓こんな感じでできあがりです.

西予市宇和町卯之町1
【西予市宇和町卯之町】(HDR)



各ソフトについて

- Photomatix Pro 4.0:HDR合成のソフト.ライセンス価格:8,500円(Photomatix Pro 3のライセンスはそのまま使えます).ダウンロードはこちら→http://www.hdrsoft.com/jp/index.html
- GIMP 2:有名なフリーの画像編集ソフト.たいていのことはできるし,フィルタはかなり充実してます.ダウンロードはこちら→http://www.gimp.org/downloads/

テーマ : HDR (ハイダイナミックレンジ)
ジャンル : 写真

いろんな蟇股 【解説】

とりあえず↓この写真を.

大法寺三重塔初重
【大法寺三重塔初重】(HDR)

写真中央の部材を「蟇股(かえるまた)」といいます.蛙が股を広げてふんばっている時の脚の形に見えます…よね.この写真は正慶2 (1333)年築の「大法寺三重塔」(国宝,長野県小県郡青木村)のものです.蟇股は禅宗様(参照:正福寺地蔵堂にみる禅宗様建築)や大仏様(参照:東大寺南大門にみる大仏様建築)にはない「和様(わよう)」の構造材です(新しいものは構造材としての機能はほとんどなく単に装飾材となります).蟇股は時代によっていろいろな形があるので観察してみると面白いと思います.

蟇股いろいろ#
【蟇股いろいろ】

1. 東大寺転害門(国宝,奈良県奈良市,参照:東大寺 #1) - 天平(天平宝字頃)
2. 法隆寺鐘楼(国宝,奈良県生駒郡斑鳩町,参照:法隆寺 #1) - 平安中期(寛弘~寛仁頃)
3. 平等院鳳凰堂 - 翼楼(国宝,京都府宇治市,参照:平等院) - 平安中期(天喜元 [1053]年)
4. 宇治上神社本殿(国宝,京都府宇治市,参照:宇治上神社) - 平安後期
5. 一乗寺三重塔(国宝,兵庫県加西市,参照:一乗寺) - 平安後期(承安元 [1171]年)
6. 十輪院本堂(国宝,奈良県奈良市,参照:十輪院) - 鎌倉前期
7. 水上八幡神社本殿(重文,山形県鶴岡市) - 室町後期
8. 瑞巖寺五大堂(重文,宮城県宮城郡松島町) - 桃山(慶長9 [1604]年)

1と2は「二重虹梁蟇股式(にじゅうこうりょうかえるまたしき)」とよばれる構造に使われている蟇股です.梁を二重に重ねるときに梁の上に蟇股をおきます.1は天平期のもので,まだ「蛙の股」のような形にはなっていません.同様の形のものは大陸の建築に見ることもできるので,この形で大陸から伝わったようです.古い蟇股は板状のもので「板蟇股(いたかえるまた)」とよばれます (1~3).平安以降は中備(なかぞなえ)(斗きょうの間の構造材)に蟇股を用いるようになります (4~8).古いものは板蟇股ですが,平安後期になると内部を刳り抜いた「刳抜蟇股(くりぬきかえるまた)」がでてきます (4~8).刳抜蟇股は「本蟇股(ほんかえるまた)」ともよばれます.初期の本蟇股は左右を別々の板でつくりますが,新しいものでは一枚の板を刳りぬいてつくります.内部の彫刻も時代の特徴がでるもので,中世は唐草などの模様で (7),桃山以降は具象的なものになっていきます.8の瑞巌寺五大堂は方三間のお堂なので中備を12個おけるわけですが,蟇股に十二支が彫ってあります(写真は卯).

ということでもういっちょ蟇股.

新薬師寺地蔵堂蟇股
【新薬師寺地蔵堂】(HDR)

これは「新薬師寺地蔵堂」(重文,奈良県奈良市,参照:新薬師寺)のもので,鎌倉前期(文永3 [1266]年)のものです.

こっちにも蟇股の写真ありますよ→『夏の四国ツーリング

テーマ : 神社仏閣
ジャンル : 学問・文化・芸術

塔の相輪 【解説】

五重塔や三重塔というと高層建築で地震の揺れには弱そうな気もしますが,がちがちに固められたものではないので揺れを逃がすようになっていて,地震に強い構造になっています.文献にも地震で倒壊したことはあまり記されていないのですが,風にはちょっと弱いようです.塔の上部は荷重が少ないので,風にあおられるとそのまま倒れたりします.ただし,風に弱いといっても近世以降の新しいもの以外はそうでもないのです.塔のてっぺんには「相輪」があって,古いものは相輪が大きく重いものなので,風に耐えるだけの荷重が十分にあるんです.相輪というと飾りのように思うかもしれませんが,実は構造上重要なものなのです.相輪の大きいものでは塔総高の3分の1を占め,重量は3 tにもなります.

兵庫県加西市の「一乗寺」というと西国三十三箇所の第二十六番札所で,平安時代の三重塔があります(一乗寺三重塔,国宝).斜面にたつ塔でこの上に懸造の本堂があり,そこから塔の相輪がよく見えます.

一乗寺三重塔相輪
【一乗寺三重塔相輪 - 九輪,水煙,竜車,宝珠】(HDR)

相輪は7つの部分からなっていて下から「露盤」,「伏鉢(覆鉢)」,「請花」,「九輪」,「水煙」,「竜車」,「宝珠」といい,これをつなぐ中心の管を「さっ管」(※「さつ」は木偏に察)といいます.

一乗寺三重塔相輪1 一乗寺三重塔相輪2
【一乗寺三重塔相輪全体,下部】

飾りのようで飾りってだけではない.

※追記
美しい水煙の例 → 「薬師寺東塔の相輪

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ジャンル : 学問・文化・芸術

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タカシ☆TZR(ヤブキ タカシ)

Author:タカシ☆TZR(ヤブキ タカシ)
兵庫県出身,大学からは宮城.その後,横浜での勤務を経て現在は東京勤務で千葉県在住.愛機はYAMAHAのTZR250R.

国内の文化財の写真を適当に載せていきます.今のところ隔日ぐらいの更新にしてます.日本の美にこだわって近世以前のものを中心に.こんなタイトルのブログだけど,バイクで行ったところでないところの話もでてきます.

「たびねす」というサイトでナビゲーターやってます → 最新記事(2016年11月28日更新)

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